道しるべ
5/30 理想の人生
ここの所、毎日の様に世界経済、とりわけEU諸国の情勢不安のニュースが絶えませんが、言うまでもなくその火種はギリシャであり、現地状況を知るに付けその国民性にはやはり疑問符を付けずにはおれません。
今日の状況は、その歴史からはじまり色んな複雑な要因があってのことでしょうが、その中には世代を通じて脈々と継承される価値観の存在が、良くも悪くも大きな役割を果たしている様に思います。
この点で言えば、残念ながらギリシャのそれは決して褒められたもので無かったかも知れません。
翻って、我々日本では多くの先人達の遺訓や教え、また歴史があり、他国同様多くの困難を抱えながらも、それが精神的支柱になって今日の日本を支えているといっても過言ではないでしょう。
身近なところで言えば、私も先代(父)から存命中には多くの教えを得、その中に、晩年のある時にさり気なく私に手渡してくれた記事の切り抜きがあり、そこにも先代の人生観をみる事ができます。
それは、竹内 均(1920/7/2 - 2004/4/20)氏という著名な物理学者が記された「理想の人生」というショートエッセイで、その中で理想の人生を実現する為の具体的な方法として、(1)勤勉(2)正直(3)感謝の三つであるとしています。
おそらく、先代は、自分の人生に照らし合わせて、「我が意を得たり」と、素直に心に入ったのでしょう、話下手な人でしたから、このエッセイを通じて私に想いの一遍でも伝えたかったのだろうと想像します。
跡を継ぐとは、心を継ぐことでもあるでしょうから、今後の指針として、私も忘れない様にしたいと思います。
備忘録として、少し長いですが、ここに全文引用しておきます。
「私は理想の人生とはどういうものか」というところから話を始めることにしている。
私の考えでは、「自己実現」の人生が理想の人生である。
そして自己実現の人生とは(1)好きな事をやり・(2)それで食べる事が出来・(3)しかも、それが聊かなりとも他人に役立つ様な人生である。
つまり「仕事」と「遊び」が一致した自己実現の人生こそが理想の人生である。松下幸之助さんや本田宗一郎さんといった人の人生を考えれば、そのことが理解される筈である。
こういう偉大な人の一生を綿密に辿ってみれば、こういう理想の人生を実現する為の具体的な方法も見つかる筈である。それをあれこれと探し求めた私は、(1)勤勉・(2)正直・(3)感謝の三つがそれではないかと考える様になった。
ただし「勤勉」は額に汗して働く事であり、「正直」は約束したことを必ず実行し、実行出来そうもないことを約束しないことである。
「感謝」には様々な段階がある。月給分だけの仕事をきっちりと仕上げるのはもっとも低次の感謝であり、勤勉と正直を実行して成功した時にはそれを他人のせいにし、失敗した時にはそれを自分のせいにするのは、かなり高次の感謝である。
ここで述べた勤勉・正直・感謝を仮に善因と呼ぶことにすれば、それを実行した事によって得られる自己実現の人生は善果といって良い。この善因(あるいは悪因)と善果(悪果)とをつなぐ因果関係が紀元前400年頃の釈尊のいわれた「善因善果・悪因悪果」、「因果応報」すなわち人間界における因果律(因果の法則、道徳律)ではなかろうか。
私のこれまでの人生経験では、人間界における因果律の存在は、自然界におけるそれとほとんど同程度に確かな事である。それは神や仏の様な絶対者の存在よりもよほど確かな事である。
大哲学者イマヌエル・カント(1724~1804)も言っているではないか。「それを思う事がたびたび重なれば重なるほど、また長ければながいほど、ますます新たな、かつますます強い感嘆と崇敬の念をもって心を満たすものが二つある。
わが上なる星の輝く空(自然界における因果律ー竹内注)と、わが内なる道徳法則(人間界における因果律)である」。
2012-05-30 14:33:19 | RSS